只見つづりの「北海道弁講座」*4『あずましい』
第4回目です。な行を先に済ませましたので順当に「あ」行から始めて参りましょう。
「あずましい」
意味は、居心地が良い、広々としてくつろげる、気持ちがいい、と言ったところでしょうか。
逆に、居心地が悪いのは「あずましくない」と言います。
以前に東京に住んでいる友人のところへ会いに行き、久しぶりに食事へ。居酒屋さんへ入りました。その日は珍しく空いていてお客さんもまばらで、店の中もゆったりした雰囲気。広々とした掘りごたつの席でゆっくりと飲んだり食べたりできました。
店に入って、私「まあ、あずましくて、いいわ。」
友人「久々に聞いたわ、『あずましい』って。」
友人も北海道出身。でも、もう何十年も東京にいるから、内地の人の言葉。
あずましい~~東マックスが「しぃ」と言った、ではなく、そのルーツは諸説ありそうです。有力な説は「吾妻しい」からきていると何かのものの本で読んだ記憶があります。
吾が妻がとなりにいつもいるような居心地の良さ、から「吾妻しい」となったのでは、という説。「安住しい」や「味ましい」からきているのでは、という説もありますね。
「吾妻」だったら「あづましい」と「づ」と書くべきでしょうか。どっちでもいいような気もしますが。方言なんだからね。
「あずましくない」は居心地が悪い時に使います。場所的になんだか狭くてごみごみしているようなところはもちろん「あずましくない」ですが、例えば、お客さんが頻繁に来てゆっくり話も出来ないようなお店、広々として綺麗だけれどあまりに上品すぎてくつろげない高級レストランなども「あずましくない」と言います。
使用例
旅行から帰ってきた梅さん。
梅さん「やっぱり我が家が一番あずましいわ。」とか。
高級フレンチレストランで。
桜さん「なんかさ、ナイフやらスプーンやらフォークやらで、上品すぎてあずましくないわ。料理だって綺麗かもしんないけど、こんなにちゃんこいべさ。食ったきしないんだわ」とか。
旅行先の旅館で。
梅さん「枕硬くて眠れんかったわ。あずましくね。」
桜さん「わたしもさ。この布団かけたら暑くてさ、あずましく眠れんかったべさ。」
なんて言うのよね。
雰囲気が悪いことも敏感に察知して、「あずましくない」と表現する道産子気質。
いいのか悪いのか。
それではみなさんご一緒に。
「あずましくないわ」
はい。ありがとうございました。
そうそう、「ら」抜きの言葉をよく使う。
「眠れんかった」は正しくは「眠られなかった」となるはずなのにね。「食べられなかった」は「食べれんかった」など。「食べれるよ~」「眠れるよ~」とか。まあ普通かな。
でもね、道産子は命令するときに「れ」をつけるのです。
「勉強すれ」または「勉強しれ」といっちゃう。正しくは「勉強しろ」と言いますね。
「早く起きろ」→「早く起きれ」(これは普通か?)
「早く寝ろ」→「早く寝れ」
「ちゃんと話せ」→「ちゃんとしゃべれ」
「残さず食べろ」→「残さず食べれ」
なんてね。命令するのよ、面白いわね!
「~しろ」が「~しれ」になります。
母:梅さん「あんた、いつまでゲームやってんのさ。早く宿題しれ」
息子:桐くん「わかってるって。今しようと思ってるとこだったしょや。」
梅さん「今何時だと思ってるのさ、時計見て見れ。」
桐くん「うるさいなぁ、もう。」
梅さん「うるさいって、あんたね、親に向かって、なに言ってんのさ、いい加減にしれ。」
桐くん「うっ、ご、ごめんなさい。」
(桐くん、たぶんはたかれたに違いないわ)(注:平手で叩くことを「はたく」と言います。グーで殴ることははたくと言わないのよね。そこが難しい)
そんな会話があちこちから聞こえてくる北海道のお茶の間事情。
さあ、皆さんご一緒に。
「いい加減にしれ。」
ありがとうございました。
次回もお楽しみに。
良かったら押せばいっしょ。