作詞家になりたくて

歌になりたがっている詞があります。 
言葉たちが一瞬でも輝やいてくれますように!

「桜貝」

暖かくなると、海辺へ出かけたくなってしまう。春の海岸へ。


子供のころは、海岸沿いに家があって、歩いてすぐに、砂浜があった。
砂浜には、いろいろなものが流れつく。
昆布、や海藻。ガラス瓶や空き缶、プラスチックの容器。流木。そして貝殻。
その中でも、ピンク色の貝殻、桜貝。
探し回ったものです。
近所の友人と一緒に。
一番の仲良しだった真由美ちゃん。
「ねえ、知ってる?桜貝って、人魚のうろこなんだって」
どこからそんな知識を仕入れてきたのか、わからないけれど、私はそれを信じてしまった。
「うそ~。人魚なんていない。」
「いるって。人魚を見た人がいるって、本に書いてあったもん」
真由美ちゃんは断言した。
幼い私達は、人魚のうろこを探し回った。
何枚かの桜貝をポケットに入れて、家に帰ってから、父から誕生日のプレゼントにもらったオルゴールの箱の中に、しまっておいた。
綺麗な形の桜貝は、たった一枚だったけれど、私の宝物だった。後は、欠けていたり、穴が開いていたり、色もくすんでいたりしていた。オルゴールを開けるたびに、人魚のうろこが光っていた。
あるとき、二つ上の兄が、桜貝を見ている私に「何してる?」と聞いてきたので、「ねえ、お兄ちゃん、桜貝は人魚のうろこなんだって」と話すと、「ぜったい、違う」と言い張るので、私が泣いてしまった。
母が聞きつけて、訳を話すと、母は私達に、こう言った。
「いいかい、この桜貝はね、人魚のうろこでもあるし、竜宮城に飾られているお城の一部分なんだよ。乙姫様はホントは人魚で、そこのお姫様だからね。」
そう言って、笑った。
「たくさん集めると、幸せになれるんだ」


私と兄は、次の日から、海岸で桜貝の収集にとりかかった。真由美ちゃんも巻き込んで。


玄関にはジャムの瓶、いっぱいに入った桜貝がずっと置いてあったな、と今頃思い出した。


海からの贈り物、桜貝は、やはり綺麗です。

それではまた。

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